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当店がグリーンゾーンを辞退したことに関して取材を受けました。放送は未定ですが賛否が予想されるため、できる限り誤解のない形で当店の考えを知っていただくために、昨年10月に投稿した『やまなしグリーン・ゾーン認証辞退』に関して、研究機関の最新情報等を踏まえ、改めてご報告させていただきます。

当店は、やまなしグリーン・ゾーン認証辞退店です。
※その為、プレミアム食事券はご利用いただけません

◆辞退理由

『パーティションを設置しないこと』を選択するために、2021年10月末でやまなしグリーン・ゾーン認証を辞退。
※パーティションの設置が認証更新に必須であったため

◆経緯

【2020年10月】

これまで、店内の雰囲気やお客様の居心地を大事に店づくりをしてきたため、パーティションを設置することで生まれてしまう圧迫感や不快感を懸念し、パーティションの設置を避けて申請を行った。当時は最低1メートルの対人距離を確保する、あるいは横並びに席を配置することで可とされていたため、客席にはパーティションを設置せずに、2020年10月にやまなしグリーン・ゾーン認証店舗として承認。

【2021年10月】

①2021年10月末を期限として、やまなしグリーン・ゾーン新認証基準(4名掛けなら十文字に設置するなどパーティションの設置が必須)を満たして認証を更新するか、あるいは辞退するかを認証事務局より問われる。

②2021年10月当時、新型コロナウイルスは感染力の強いとされるデルタ株に置き換わっており、当店もパーティションの設置を進めるべきか検討。

③2021年3月にWHO(世界保健機関)が空気感染について認めており、5月にはCDC(米疾病対策センター)も空気感染について言及。これに加え10月までに、様々な研究機関において空気感染が主な感染経路である可能性について触れられており、日本でも広く報道されていた。その中で『パーティションの設置が感染対策に逆効果』である可能性について言及した研究機関があることを知り、引き続き『パーティションを設置しないこと』を選択すべきという考えが生まれる。

④2021年10月当時、日本の感染症研究の根幹である国立感染症研究所は、『飛沫感染』と『接触感染』を主な感染源としており、『空気感染』については言及することはなかったため、日本の感染対策は飛沫と接触に重きを置いたものであった。やまなしグリーン・ゾーン認証の認証基準も例外ではなかったため、パーティションの設置に関する強化基準も10月末までに改定されることはなかった。

⑤やまなしグリーン・ゾーン認証認証事務局に対し、パーティションの設置をせずに更新できるよう意見書を提出。

⑥パーティションの設置は必須事項であるとの回答を得て、辞退申請を認証事務局へ提出。2021年10月末に認証登録抹消。

◆2021年10月末日時点での当店の考え方
※以前公開したブログ記事です。本記事と内容の重複がありますが、想いを綴ったものですので、そのまま貼り付けます。

①2021年10月末日をもってグリーン・ゾーン認証を辞退しました。
※パーティションの設置をしない限り、認証の更新を受けることができないため

②感染対策はこれまで通り行います
※グリーン・ゾーン新認証基準である「HEPAフィルター内蔵空気清浄機」と「二酸化炭素測定器」は設置しています

お客様には、当店が実施する感染対策にご理解とご協力をお願いするとともに、当店の感染対策に不安を覚える場合には、パーティションが導入された県内グリーン・ゾーン認証施設のご利用をおすすめいたします。何も気にせずに外食を楽しめる日が早く訪れますよう心から願っております。

ここからは理由と経緯をお話いたします。(長くなります)

当初、新型コロナウイルスの感染は飛沫と接触が主な感染経路であるとされていました。感染を防ぐためには『三密回避』が重要とされ、三密回避のための様々な対策が講じられてきました。その後、感染力の強い変異株の発現により、更なる感染対策が必要であるとされ、感染対策の見直しが始まります。やまなしグリーン・ゾーンの認証基準も見直され、HEPAフィルター内蔵の空気清浄機や二酸化炭素濃度測定器の設置に加え、頭が隠れる高さ且つ机と同等の幅(4名掛けは十字)のパーティションの設置などが盛り込まれました。

そんな中、それまで猛威を振るっていたコロナウイルスが変異株に『置き換わる』ことで状況は変化します。変異株は、これまでの飛沫・接触による感染ではなく、空気感染いわゆるエアロゾル感染を主な感染経路としているのでないかという考えが見受けられるようになったからです。これが事実であるとするならば、現在最も有効な感染対策は「換気とマスクの着用」であると結論付けられます。そして、これまで対策として広く導入されていたパーティションに関しては、場合によって空気の流れを妨げ換気効率を悪くする、あるいはパーティション内のエアロゾル濃度が高まり感染リスクが上がるといった研究結果が多く報じられるようになりました。つまりパーティションを設置しているからといって安全ではなく、『逆効果』の可能性すら出てきたということです。もちろんそれぞれの店舗の間取りや風の流れなどの状況にも因るので、可能性の話です。しかし、様々な研究機関やメディア(※1)でパーティションの逆効果が取り沙汰されている以上、このパーティションの設置について、感染対策としての有効性に疑問を抱かずにはいられませんでした。

※1
①2021年8月30日の東洋経済ONLINE(the New York Times)から抜粋
・バージニア工科大学リンジー・マー教授「仕切りが林立した教室では、正常な換気が妨げられる」「エアロゾルが仕切りの中に蓄積され、最後には外に広がっていく」
・取材したエアロゾル研究家の全員が「机のアクリル板が感染防止に役立つ可能性は低く、部屋の正常な換気を妨げる可能性が高い」という見解で一致した
https://toyokeizai.net/articles/-/451074

②2021年5月31日の国立大学法人 電気通信大学によるお知らせから抜粋
・電気通信大学横川慎二教授らの研究によると「アクリルやビニールシートによる空間遮蔽が換気に悪影響を及ぼし、結果として飛沫感染の一因となる可能性がある」
https://www.uec.ac.jp/news/announcement/2021/20210531_3411.html

手指消毒や黙食、マスクを着用しての会話はお客様ご自身が、ご自身と同席するお相手の命を守るためにすべきことです。では、店舗側がお客様に提供できる最も有効な感染対策は何かと考えたとき、それは『換気』であると当店は考えました。その妨げとなる可能性があるものは、極力置くべきではない。これが当店の考え方です。

コロナ禍で改めて飲食店の在り方とは何かを考えました。お客様からご意見も伺いました。友人と食事に行ったところ、パーティションに区切られて会話はできず、ドリンクが残っているのに90分を過ぎると退店させられた…そう残念そうにお話してくださったお客様もいらっしゃいます。「まるで囚人との面会」「圧迫感があって食欲が失せる」「話が聞こえなくて聞こえたふりをしたことがある」そんな声も聞きます。これは今、やまなしグリーン・ゾーン新基準を満たした認証店舗ではどこでも有り得ることです。認証と引き換えに、お客様が飲食店に求めているものの大部分が失われているのではと感じます。そして思い出します。大学時代、とあるホテル企業取締役の方とお話する機会がありました。その方は私が飲食店を志すものだと知るとこんな話をしてくださいました。私たちが提供するのは『三間』ー『時間(ジカン)・空間(クウカン)・人間(ジンカン)』。この最後の『人間』は「ニンゲン」ではなく「ジンカン」と読み、人と人とのつながり・あるいはつなぐ役割だと。まさにその通りだと私は思いました。そして、そういうお店でありたいと考えながら今日まで営業してきました。

状況は少しずつ変わってきました。ワクチン接種率は国民の半数を越えています。各所で制限の緩和が見られ、山梨県においても『ワクチン接種証明書等の提示による人数制限のない個室での宴会』について実証実験が行われているようです。それでもパーティションは必要だと断言すべきなのか…疑問は解決されないままですが、当店としての結論は出すことができました。パーティションがない方が安全だとは言い切れない、しかし、あっても安全だと言い切れないのであれば、先に挙げた『三間』を優先すべきだと。大切な人と、時間と空間を楽しみ人間(ジンカン)を育む、そんな間を提供することが当店の在り方だと、そう考えているからです。

様々なご意見があるとは思いますが、これが当店の意向です。県内にはグリーン・ゾーン認証を受けながらも素敵な時間を過ごせるよう努力しているお店がたくさんございます。当店が正解でないことは十分承知しています。正解がわからない中で、それぞれの事業者がそれぞれに正解を探して、このコロナ禍を乗り越えようと努力しています。当店と同じようにグリーン・ゾーンの認証から漏れる店舗は、認証を受けていないがためにGOTOなどの様々な経済政策の対象から除外されるため、非常に弱い立場になることも予想されます。認証の有無にかかわらず、飲食業はまだまだ厳しい状況を抱えている事業者も多く、コロナ禍で閉店を余儀なくされた仲間もいました。どうか馴染みのお店だけで構いません、県内の飲食店を応援してください。よろしくお願い致します。最後までお読みいただきありがとうございました。

※本投稿は、やまなしグリーン・ゾーン認証制度について批判的な意見を主張をするものではありません。むしろ制度そのものは、県民と事業者を守るために非常に重要な役割を担うとともに大きな効果があったと、賛同する立場にいます。だからこそ、現状に見合った内容へと常に変化し続けるべき制度でもあるのではないかと、個人的に感じています。

以上、2021年10月のブログ記事転載

◆現在と今後について

2022年3月28日に国立感染症研究所が『空気感染』について明記したことで、これまでの選択が間違いではなかったのだとホッと胸をなでおろすような感覚でいます。

参考までに
①2022年3月28日の国立感染症研究所
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染経路について
https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2484-idsc/11053-covid19-78.html

②2022年4月9日のAERA dot.ニュース記事
国立感染研「空気感染」と明記し波紋 専門家は「感染対策をミスリードした可能性はある」と指摘
https://dot.asahi.com/dot/2022040800072.html?page=1

感染対策においては、店舗への負担(入店管理簿への協力依頼、消毒の徹底などの作業面と手指消毒用アルコール代などの費用面)があります。徹底するには、それだけの人手と時間とお金を必要とします。徹底したくても、そこに余力のない事業者にとっては限界があります。結果として、やまなしグリーン・ゾーン認証店舗として認証されることが目的になってしまい、認証後は感染対策としてほとんど機能していないような事態すら店舗によってはあり得るわけです。

無理をしてどれもが中途半端になるならば、できる範囲で徹底すべき。それが当店の考え方です。

【現在当店が行っている主な感染対策】

①アルコール度数77%の手指消毒用アルコールを店内10数ヵ所に設置
(出入口・お手洗い・レジ前・各テーブル)

②入店管理簿への代表者氏名と連絡先記入の徹底
(ご協力いただけない場合は入店をお断りさせていただいております)

③約90平米の店内に対し、約55平米の空気清浄機能を備えたHEPAフィルター内蔵空気清浄機を2台(55平米×2台=110平米)を24時間稼働
(24時間365日の稼働がメーカーにより推奨されているため)

④店内すべての換気扇を営業時随時稼働するとともに、二酸化炭素測定器の数値を元に1000ppmを超えたことを確認、あるいは超えそうだと判断した場合は窓もしくは入り口扉あるいはその両方を開放して換気
(これによりppmが下がったことを数値で確認することができています)

⑤通常約50席の店内を半数に減席しグループ間と対人距離を確保

⑥お客様へ感染対策(手指消毒・黙食・マスク着用など)への協力を入口看板およびメニューに記載・呼びかけ

⑦店内アルコール消毒の徹底
(テーブル・メニュー・調味料など、お客様が触れたものはその都度アルコールで拭きあげます。メニューに関しては、ほぼすべてのお客様が触れるものなので、その都度拭きあげられるようブック形式からA3一枚に集約し、次のお客さまにお渡しする前に必ず拭きあげています。)

加えて、スタッフ自身の手指消毒徹底とマスク着用、体調(体温)管理

今後、コロナウィルスの変異次第で状況は変わることもありますが、当店としては当店にできる範囲で対策を徹底する。そこにこれまでもこれからも変わりはありません。グリーン・ゾーン認証店舗であろうとなかろうと、すべきと考え自分たちにできることは実行してまいりました。もし今後、やまなしグリーン・ゾーン認証基準が換気に重きをおいた基準に改定されたならば、当店の感染対策を第三者機関に認めていただけるよう、今一度認証申請をする所存でおります。

以上長くなりましたが、お読みいただきありがとうございました。

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