当店は、やまなしグリーン・ゾーン認証を辞退します。
変異株に置き換わった現在、空気感染が主な感染経路である可能性について広く報道されています。その中で『パーティションの設置が感染対策に逆効果』である可能性について言及した研究機関があることを考慮し『パーティションを設置しないこと』を選択します。
①2021年10月末日をもってグリーン・ゾーン認証を辞退します
※パーティションの設置をしない限り、認証の更新を受けることができないため
②感染対策はこれまで通り行います
※グリーン・ゾーン新認証基準である「HEPAフィルター内蔵空気清浄機」と「二酸化炭素測定器」は設置しています
お客様には、当店が実施する感染対策にご理解とご協力をお願いするとともに、当店の感染対策に不安を覚える場合には、パーティションが導入された県内グリーン・ゾーン認証施設のご利用をおすすめいたします。何も気にせずに外食を楽しめる日が早く訪れますよう心から願っております。
ここからは理由と経緯をお話いたします。(長くなります)
当初、新型コロナウイルスの感染は飛沫と接触が主な感染経路であるとされていました。感染を防ぐためには『三密回避』が重要とされ、三密回避のための様々な対策が講じられてきました。その後、感染力の強い変異株の発現により、更なる感染対策が必要であるとされ、感染対策の見直しが始まります。やまなしグリーン・ゾーンの認証基準も見直され、HEPAフィルター内蔵の空気清浄機や二酸化炭素濃度測定器の設置に加え、頭が隠れる高さ且つ机と同等の幅(4名掛けは十字)のパーティションの設置などが盛り込まれました。
そんな中、それまで猛威を振るっていたコロナウイルスが変異株に置き換わることで状況は変化します。変異株は、これまでの飛沫・接触による感染ではなく、空気感染いわゆるエアロゾル感染を主な感染経路としているのでないかという考えが見受けられるようになったからです。これが事実であるとするならば、現在最も有効な感染対策は「換気とマスクの着用」であると結論付けられます。そして、これまで対策として広く導入されていたパーティションに関しては、場合によって空気の流れを妨げ換気効率を悪くする、あるいはパーティション内のエアロゾル濃度が高まり感染リスクが上がるといった研究結果が多く報じられるようになりました。つまりパーティションを設置しているからといって安全ではなく、『逆効果』の可能性すら出てきたということです。もちろんそれぞれの店舗の間取りや風の流れなどの状況にも因るので、可能性の話です。しかし、様々な研究機関やメディア(※1)でパーティションの逆効果が取り沙汰されている以上、このパーティションの設置について、感染対策としての有効性に疑問を抱かずにはいられませんでした。
※1
①2021年8月30日の東洋経済ONLINE(the New York Times)から抜粋
・バージニア工科大学リンジー・マー教授「仕切りが林立した教室では、正常な換気が妨げられる」「エアロゾルが仕切りの中に蓄積され、最後には外に広がっていく」
・取材したエアロゾル研究家の全員が「机のアクリル板が感染防止に役立つ可能性は低く、部屋の正常な換気を妨げる可能性が高い」という見解で一致した
https://toyokeizai.net/articles/-/451074
②2021年5月31日の国立大学法人 電気通信大学によるお知らせから抜粋
・電気通信大学横川慎二教授らの研究によると「アクリルやビニールシートによる空間遮蔽が換気に悪影響を及ぼし、結果として飛沫感染の一因となる可能性がある」
https://www.uec.ac.jp/news/announcement/2021/20210531_3411.html
手指消毒や黙食、マスクを着用しての会話はお客様ご自身が、ご自身と同席するお相手の命を守るためにすべきことです。では、店舗側がお客様に提供できる最も有効な感染対策は何かと考えたとき、それは『換気』であると当店は考えました。その妨げとなる可能性があるものは、極力置くべきではない。これが当店の考え方です。
現在、やまなしグリーン・ゾーン認証の認証基準にはパーティションの設置について明記されています。パーティションの効果に疑問を唱える報告が上がっているのであれば、認証基準に変更がなされるのではと思っていましたが、今現在見直しはされていません。10月に入りやまなしグリーン・ゾーン認証について継続意志確認書の提出を求められましたので、継続を希望する旨と共に但し書きとしてパーティションの設置に関しての意見書を提出いたしましたが、パーティションの設置は必須条件である為、設置しない状態での更新は認められないとの回答をいただきました。その結果、非常に不本意ではありますが、当店は認証基準を満たすことがかなわない為、2021年10月末日をもちましてやまなしグリーン・ゾーン認証の継続を辞退する運びとなりました。
コロナ禍で改めて飲食店の在り方とは何かを考えました。お客様からご意見も伺いました。友人と食事に行ったところ、パーティションに区切られて会話はできず、ドリンクが残っているのに90分を過ぎると退店させられた…そう残念そうにお話してくださったお客様もいらっしゃいます。「まるで囚人との面会」「圧迫感があって食欲が失せる」「話が聞こえなくて聞こえたふりをしたことがある」そんな声も聞きます。これは今、やまなしグリーン・ゾーン新基準を満たした認証店舗ではどこでも有り得ることです。認証と引き換えに、お客様が飲食店に求めているものの大部分が失われているのではと感じます。そして思い出します。大学時代、とあるホテル企業取締役の方とお話する機会がありました。その方は私が飲食店を志すものだと知るとこんな話をしてくださいました。私たちが提供するのは『三間』ー『時間(ジカン)・空間(クウカン)・人間(ジンカン)』。この最後の『人間』は「ニンゲン」ではなく「ジンカン」と読み、人と人とのつながり・あるいはつなぐ役割だと。まさにその通りだと私は思いました。そして、そういうお店でありたいと考えながら今日まで営業してきました。
状況は少しずつ変わってきました。ワクチン接種率は国民の半数を越えています。各所で制限の緩和が見られ、山梨県においても『ワクチン接種証明書等の提示による人数制限のない個室での宴会』について実証実験が行われているようです。それでもパーティションは必要だと断言すべきなのか…疑問は解決されないままですが、当店としての結論は出すことができました。パーティションがない方が安全だとは言い切れない、しかし、あっても安全だと言い切れないのであれば、先に挙げた『三間』を優先すべきだと。大切な人と、時間と空間を楽しみ人間(ジンカン)を育む、そんな間を提供することが当店の在り方だと、そう考えているからです。
様々なご意見があるとは思いますが、これが当店の意向です。県内にはグリーン・ゾーン認証を受けながらも素敵な時間を過ごせるよう努力しているお店がたくさんございます。当店が正解でないことは十分承知しています。正解がわからない中で、それぞれの事業者がそれぞれに正解を探して、このコロナ禍を乗り越えようと努力しています。当店と同じようにグリーン・ゾーンの認証から漏れる店舗は、認証を受けていないがためにGOTOなどの様々な経済政策の対象から除外されるため、非常に弱い立場になることも予想されます。認証の有無にかかわらず、飲食業はまだまだ厳しい状況を抱えている事業者も多く、コロナ禍で閉店を余儀なくされた仲間もいました。どうか馴染みのお店だけで構いません、県内の飲食店を応援してください。よろしくお願い致します。
最後までお読みいただきありがとうございました。
※本投稿は、やまなしグリーン・ゾーン認証制度について批判的な意見を主張をするものではありません。むしろ制度そのものは、県民と事業者を守るために非常に重要な役割を担うとともに大きな効果があったと、賛同する立場にいます。だからこそ、現状に見合った内容へと常に変化し続けるべき制度でもあるのではないかと、個人的に感じています。
#やまなしグリーン・ゾーンをやめるという選択
#ただし感染対策はこれまで通りしっかりと
#グリーンゾーン差別による経済政策格差
#換気を阻害しエアロゾル蓄積の可能性
#パーティションだらけの店内
#囚人面会のような食事
#NoMore面会メシ
コメント
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南アルプス市内で小さな居酒屋を営んでおりますが、私も同感です。令和4年3月31日をもって山梨県グリーンゾーン認証店から脱退致しました。
居酒屋晩酌屋さま
コメントありがとうございます。同じように飲食店を営む方に賛同のお声をいただけることはとても励みになります。夜メインの居酒屋という商売ではこれまでに大きな打撃を受けていることと思います。その上で、『プレミアム商品券』を利用できなくするという選択は大きな決断だったと思います。それでもお店の考えを理解し、応援してくださるお客様のために、そして自分たちのために、お店を続けていくためにできることはしていきたいですよね。コロナだけでなく、今後はウクライナで物価上昇も懸念しなくてはなりませんが、何とか乗り越えていけますように。同感の声を届けていただき、ありがとうございました。